ホルエッセイ

老人と嘘

祖父(父方)は、善人でも悪人でもなかったが、ナチュラルに嘘を言うことがあった。嘘、という言い方は適切ではないのだが、なんといってよいか分からない。微妙に話を盛るというか、いや、これも違うな。 私が大学院に通っていた頃、祖父が「この間、あんた…

被害を訴えられるとき

被害を訴えられ、かつ、その被害の内容が事実か分からない場合の対応の仕方に、いつも失敗し続けているように思う。 まず、人から何らかの被害を訴えられたり相談されたりするとき、聞かされた人は「これはウソかもしれない」とか「大袈裟に言ってるのかもし…

私がオバさんになっても(10年前について所感)

10年前の今ごろ、私は26歳を目前にしていた。26歳は私にとって特別な鬱年であった。母が私を産んだのが26歳だったからだ。自分はとうに生殖年齢に達しているのだ、ということを嫌でも感じさせられる年であった。だが私は、産む産まないを考える前に、完全に…

アルバム『PAN』再訪(20年前について)

去年に、友人のバンドが出るというので、ブルーハーツ縛りのコピーバンド大会に行った。バンドが10組くらい出るので、コピバンばかりそんなに観てもなぁ……と思っていたのだが、演奏者たちの思い入れが伝わる良いイベントだった。フロアの客たちが 僕たちを縛…

地理の縮尺の問題の思い出

中学時代の怨念シリーズである。 中学のとき、わりと皆に慕われてる社会の先生がいた。テスト用紙に、ひとりひとりに赤ペンで長いコメントを書いて返したりなど、熱血系の先生やった。その先生の地理の授業である日、地図の縮尺?かなんかを答えさせる問題が…

体罰の思い出

体罰が話題になっているので、わたしも体罰の思い出について書こうとおもう。(他のところでもちょっと書いたけど)いちばん覚えているのは、中学に入ったばかりの頃のこと。嫌味で理不尽な物言いをする社会科の教師がいた(男・30代)。神経質そうであると…

センター試験の思い出

私は浪人したのでセンター試験を2回受けている。いずれも、京大のD、E号館で受けた。センター試験には色々な思い出がある(同室の人が窓の開閉をめぐって試験中に喧嘩を繰り広げるなど)が、とりわけ覚えているのは、二年目の数学IIの思い出である。 私は、…

冷静みたいなものと情熱みたいなもののあいだ(我に返るスキマを見つめて)

以前についったでも書いたんですが、ロック・コンサートにおける(観客の)身体技法ておもろいなあということをよくおもう。 それは、熱狂と昂奮に突き動かされての自然なうごきであるかのように見えて、だが、ヨコに揺れるとかタテに揺れるとか或るタイミン…

祖父をドライアイスで冷やすの巻

もう七年前の話なのだが、母方祖父が死んだ。母方祖父は病院で死んだので、病院から家まで、葬儀屋が遺体を運んでくれた。葬儀屋は、きれいに布団を敷いて、遺体を寝かせてくれた。その手際に感心し、おぢいのために何から何までありがたや……とわれわれは感…

神聖かまってちゃんとわが中学時代

神聖かまってちゃんは、当初聴いたときはあんまよくわからず、ニートとかひきこもりとかネット世代とかいうあまりにもあんまりに現代的なキーワードで語られてたのも、なんかあざとい印象を受けてたのだが、「夕方のピアノ」を聴いた途端、ぐわっ!これはも…

「犬は家族です」という言い方について

「犬は家族です」という言い方をよく耳にする。最近なされるようになった表現なのだろうか。ためしにgoogleで「犬は家族」と検索してみると、「犬は家族」と主張してる人がたくさん見つかる。mixiにも、「犬は家族です」というコミュニティがある。 「犬は家…

婚礼と選択

父方いとこたちが皆、当たり前のように就職後すぐ結婚し子を設けてゆくのにに対し、たくさんいる母方いとこのうち誰ひとり年頃になっても結婚する気配がなかったのであるが、わたしはどちらかといえばこの母方親族のコミュニティのほうに帰属意識をもってい…

ふたりの祖母

父方祖母と母方祖母は同い年である。ふたりとも健在である。「健在」ということばが適切なのかは分からない。父方祖母は、認知症が本格化してきた。同時に、介護も本格化してくる。介護の中でもっとも大変なのは排泄の世話だとよく言われるが、排泄の世話で…

以前の私と最近の私

たとえば学会やアルバイトで知らない遠くの土地に行くことはあった。知らない駅で降りたら、その駅周囲の地図を見る。が、そうするとそのとき自分の世界はその駅の周囲の半径何メートルかだけになっていて、その世界は、普段居住・行動している地域とは切り…