『生きづらさの自己表現』、病理と創造と安定と生活、私にとっての文章書きについて

最近読んだ本でよかったのは、藤澤三佳『生きづらさの自己表現』(晃洋書房、2014)。精神病院での造形教室、今村花子の食べ物アート、雨宮処凛の人形作りや河瀨直美のセルフドキュメンタリー、などさまざまな事例を挙げながら、「芸術療法の視点とアートの…

河野多惠子の「蟻たかる」「臺に乗る」が面白かったの巻(第4回)

「蟻たかる」の話の続きです。 この、史子に生理が訪れた(訪れてしまった?)ときの描写も、上手いなあ、わかるわかる!と思いながら読んだのでした。まず、史子は安堵します。そして、遅れていたのはそもそも自分の緊張と怖れのせいでないかと考えます。例…

河野多惠子の「蟻たかる」「臺に乗る」が面白かったの巻(第3回)

つづきです。 前回は「臺に乗る」という小説を紹介しましたが、同じ時期に読んだ「蟻たかる」も同じくらい面白かったのです。こちらはちょうど一年前に、同じく『文学界』に発表されたとのことです。 こちらも、テーマは「臺に乗る」に似ていて、主人公・法…

河野多惠子の「蟻たかる」「臺に乗る」が面白かったの巻(第2回)

つづき 「臺に乗る」の話のつづきです。産める-産めないという一見明らかであるように思われる問題のあいまいさ、そして、この物語においては、産みたいのか-産みたくないのか問題のあいまいさ、がそれに先立ってある、という話でありました。以後、そもそも…

河野多惠子の「蟻たかる」「臺に乗る」が面白かったの巻(第1回)

最近、河野多惠子をずっと読んでおりまして、いくつか既読の作品もあったのだが初めて読む作品もあり、その中でも、「蟻たかる」「臺に乗る」という二作がとりわけ「面白いーー!!」と感じたのですが、何が面白いか説明しようとするとなかなか難しいので、…

本日のたつぞう(たつぞうと女性論と語り手)

以前に石川達三『結婚の生態』の感想を書いたですけれども、その後、たつぞうが気になってしまいたつぞうをいろいろ読んでいるです。 『結婚の生態』で気になってしもたんはなんといっても、「この主人公の男って現代のわたしの目で読めばまるで "フェミニズ…

森茉莉の文体の自由さに驚嘆

私はまだ、インスタント・ラアメンというものをたべたことがない。何うやって造えたものだか判らないし、又判ろうとも思わないが、あの透徹った袋の中に、生湿りの針金状になってとぐろを巻いている支那ソバの化けもの、――私は支那を中華民国とは絶対言わな…

たつぞうといねこ(2)

こないだ石川達三の『結婚の生態』について書いたけど、同時期に、佐多稲子の『くれなゐ』を読んだので、そちらについても記。 べつに両作品はなんも関係ないのだが、だいたい同年齢の作家の、同時代に書かれた、どちらも結婚生活に関する話ということで、へ…

たつぞうといねこ(1)

石川達三の『結婚の生態』を読んだ。母の本棚にあったのでなんとなく。 『結婚の生態』は、1938年の作品とのこと(文庫化されたのは戦後)なのだが、これは面白い! 或る意味で。奇妙な読後感を得た。 amazonを見ると、レビューが一件だけあって、星ひとつ。…

嫁姑続き

嫁姑がいきなり自分の中でホットなテーマになり始めたので、永六輔『嫁と姑』を読んでみた。昔のコバルト文庫のように下半分の余白が多い……論っていうより箴言集&放談って感じだが、おもろいとこもあり。嫁と姑 (岩波新書)作者: 永六輔出版社/メーカー: 岩…

嫁姑漫画

わたしが生まれたとき家には大姑・姑・嫁がおり、嫁姑問題は幼い頃からそれはそれは切実な問題であったのであるが、それは我が家のことだけではなく、二世代三世代同居の多いわが地域では、どの家でもそれはそれはホットな問題で、今でも近所では姑さんらが…