夫婦同姓について尋ねてきた学生さんに関する後悔

あれはツイッターを始めた頃であるのでかなり前のことだろうか。どういう文脈かは忘れたが、その頃の何らかのニュースを受けてか、TLでは夫婦別姓を認めるか認めないかというような議論が起こっていた。というか主に、強制的同姓への非難がなされており、私もそれにのっかる形で何かひとこと書いたのだと思う。

 

するとそれに対して、見知らぬ人からリプライが飛んできた。「夫婦同姓がいやな人は、なんでそんなにいやなんですか? 全然想像つかないので教えてください」というようなものであった。

 

私は「うぐぐ……」と思った。
知らない人で、SNS上の共通の知り合いもいなさそうだったので、どうやって私にたどり着いたのかは分からない。(おそらく「夫婦同姓」とかで検索して適当に見つけた相手にコメントしたのであろう。)
プロフィールを見ると、男子学生で、いわゆる「意識高そう」な印象であった。

 

「なんでそんなにいや」と問われても困る。
夫婦同姓が「いや」な人の中にも、多様な人がいるだろう。一方だけが改姓を強制されるのが屈辱的だとか、アイデンティティを失うみたいだとかいう人もいるだろう。(女性が改姓することがほとんどであるので)男性中心主義的だからイヤだという人もいるだろうし、特に思想はないけど不便だったり手間がかかったりするからやめてくれという人もいるだろう。その複合的な立場の人もいるだろう。そもそもイエ制度とか結婚制度自体がイヤなんだよ、結婚するならせめて別姓がいいんだよ、という人もいるだろうし、それ自体には特に問題を感じてない人もいるだろうし、むしろ自分の生まれたイエに誇りをもっていて姓を守りたい!とかいう人もいるであろう。程度についても、できれば別姓も許容してほしいな……くらいの人もいれば絶対同姓反対!という人もいよう。
そして私は別に、それらの人全体を代表するわけではない。なんで俺に訊くんだ。それに、である。


当時うまく言語化できなかったのだが、私は以下のようなことを思い、少しくイラッとした。
それに、である。そんなふうにいろんな人がいることくらい、ちょっと調べれば分かるだろう。それを、おそらく自分は姓を変えさせられることはないだろう立場の人が、「なぜいやなのか分かりません」ってなんなんだ。そんならまず考えるか調べるかしてくれよ。なんでそれを他者(=女)の問題として切り離したうえで自分は関係ないみたいな顔をして「なんで君たちそんな怒ってんの?」みたいなことを見ず知らずの人に言うてくるんや。


というようなことを私はふわっと思ったものの、SNSとはそういうものであろうと思ったし、また職業柄若い学生さんには親切にせねばならないという思いもあって、「~という人もいるでしょうし、また~という人もいると思います」的なリプライをした。
そしてそれには何のレスポンスもなかった。
この自分の対応は、関係ない知らん人相手とはいえ未だにかなり後悔している。