誠実さの思い出

詳細は省くが、昔、或る人との関係がこじれたときのことを時々思い出す。
そのこじれに関しては、私の責任によるところが大きかったので、私は精一杯誠実に対応しようとした。
誠実に対応する、というのは私の苦手とするところである。普段すぐ誤魔化したり投げ出したりしてしまうし、真摯な話し合いが面倒臭くなってしまう。また、自分では必死に考えて誠実に対応しているつもりが、裏目に出て相手を傷つけたり、人から見ればとんちんかんなことを言ってしまっていたり、ふざけているように見られたりすることもよくある。
でもその人は恩義のある大切な人でもあったので、できる限りそういうことのないよう、できるだけ誤魔化したり投げ出したりすることなく、ふざけてるように見られそうなことも避け、矢継ぎ早に送られてくるメールにも、すべてちゃんと考えて返事をした。関係を最後まで大事にしたかった。


その件はしばらくして沈静化した。
何か月かして、昔のメールを整理していたときに、ふと、未開封のメールがあるのに気付いた。
それはその、こじれていた頃に相手から送られてきたメールのうちの一通だったが、私はなぜかそれを、開封していなかったのだった。普段大事なメールを見過ごすなどということは滅多にないのに。その内容は、当時送られてきたメールの中でも最も切実なもので、人間の心があるならば絶対に返信しなくてはならないような種類のものだった。

 

普通に考えれば、メールを見過ごしたことは単なるミスなのだろうが、果たしてそうなのだろうか。あれ以来、自分の「誠実さ」というものを、一切信用していない。